柴原研究室紹介

私たちの研究室では、船舶・海洋分野をはじめとする幅広い分野における設計・製造支援のための解析ツールの開発、およびそれらを各種製造分野に応用することを目標に研究を進めております。製造プロセスの中でも、特に、溶接や切断といった熱加工のシミュレーション技術の開発を中心に取り組んでおり、

1.次世代型構造解析技術の開発
2.先端的変形計測技術の開発
3.革新的製造シミュレーション技術の開発

を目標に、日夜、学生と共に切磋琢磨して勉学・研究に励んでおります。

 

1.次世代型構造解析技術の開発
これまで、多くの研究者により構造解析手法の提案がなされてきました。その中でも、有限要素法解析は、現状で最も有効な手段とされており、各種製造分野において幅広く用いられています。しかしハード面、ソフト面が充実した現代においても、計算時間やメモリ制約により、解析できる規模には限界があります。今後、より詳細かつ大規模な解析が必要になると予想される次世代においては、現在の手法に代わる新しい手法の開発が望まれます。
そこで本研究室では、設計・製造分野において30年もの間、主として用いられてきた、陰解法をベースとする有限要素法の歴史に終止符を打つべく、陽解法をベースとする新しい構造解析手法である『理想化陽解法FEM』の開発を行いました。この手法の特徴としましては、解析の結果として静的平衡状態を求解できる点は従来手法と同様でありますが、陽解法FEMをベースとしているため、解析規模と関係のあるメモリ使用量を非常に小さくすることが可能であり、また、計算速度が従来手法と比べて圧倒的に短くなる点が挙げられます。
ここで示したように、学問に精通するのは勿論のこと、その上で、既存手法という固定概念にとらわれず、次世代型の構造解析技術のあるべき姿を創造するのが、本研究課題の目指すところです。

2.先端的変形計測技術の開発
私は府大・海洋システムに赴任してから6年の間、画像解析技術をベースとする応力、ひずみ、変形計測手法の開発に取り組んできました。特に、溶接問題のような過渡の変形問題に対して本手法を適用することにより、これまで有限要素法の解析結果のような面全体に亘る変位分布や、応力・ひずみ分布を撮影画像全域に亘り計測可能であることを、2台のカメラを用いた三次元計測により明らかにしました。今後は、この画像計測技術をさらに高度化し、船体のような大きく複雑な計測対象から、結晶レベルの小さな計測対象まで、幅広く応用できるように改良を加え、よりロバストで高度な変形計測技術の確立に挑んでいきたいと考えています。

3.革新的製造シミュレーション技術の開発
鋼構造分野におきましては、部材の切断や溶接による接合を含めた熱加工の占める割合は低くありません。本研究課題においては、溶接や切断、線状加熱、ひずみ取り等の熱加工のシミュレーション技術の確立および力学的考察に基づく新しい製造プロセスの提案と実施の可能性について検討することを目的とします。上記の各種熱加工プロセスにおきましては、力学シミュレーションを活用することにより事前に問題点を把握することができ、製造の効率化を図ることができると考えられます。さらに、欠陥等の発生までをも予測することができるならば、コスト面、安全面において、非常に有用になると考えられ、これを達成することができる手法の開発は非常に重要な課題であると言えます。
具体的に、船体建造プロセスを例に考えた場合には、線状加熱による任意形状外板作成方法の提案やひずみ取りプロセスの最適化、さらには、建造時のギャップや目違い、位置決め誤差等を含めた高精度な溶接プロセスシミュレーション手法の提案を目標に研究を進めております。

 

本研究室では、以上のようにチャレンジングな研究課題に積極的に取り組み、また、それらの課題に付随する技術開発を、企業の方々および学生たちと一緒になって取り組むようにしております。以上のような取り組みを通じて、目的意識が高く、より実践的な人材の育成につなげていければと考えております。

 

大阪府立大学大学院航空宇宙海洋工学専攻
海洋システム工学分野

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